2012/02/06 両腕の血圧の違いは心臓病のリスクのシグナル
Association of a difference in systolic blood pressure between arms with vascular disease and mortality: a systematic review and meta-analysis
Peninsula College of Medicine and Dentistry, University of ExeterのClark博士らはMedline、Embase、Cochraneなどのデータベースで鎖骨下狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、あるいは生存のデータを持ち、両腕間のSBPにおける違いを示した2011年7月以前に出版された研究を検索し、変量効果メタ解析を用いて両腕間の収縮期血圧(SBP)における違いとそれぞれの転帰の関連を推測した。血管造影を用いた5つの侵襲的研究の鎖骨下狭窄(50%以上閉塞)では、両腕間のSBPにおける平均差は36.9mmHgであり、10mmHg以上の差は鎖骨下狭窄と強く関連した(リスク比:8.8)。非侵襲的研究で集められた知見で、15mmHg以上の差は、末梢血管疾患(9コホート、RR:2.5)、既往の脳血管疾患(5コホート、RR:1.6)、及び心血管系死亡率増(4コホート、HR:1.7)及び全原因の死亡率(HR:1.6)と関連した。これらの結果を鑑みると、両腕間の10mmHg以上のSBPの差は、更なる検査が必要な無症候性の末梢血管疾患と死亡のリスクが高い患者の同定に役立ち、15mmHg以上の差は、血管系疾患と死亡のリスクの有用な指針であるかもしれない。
[Lancet online edition January 30, 2012]
2012/01/30 黄斑変性症のための胚幹細胞試験:速報
Embryonic stem cell trials for macular degeneration: a preliminary report
David Geffen School of Medicine, UCLA and Jules Stein Eye InstituteのSchwarts博士らは、先進国での失明の主たる原因であるStargardt黄斑ジストロフィーと年齢が関係した乾燥黄斑変性患者においてヒト胚幹細胞由来の網膜色素上皮(RPE)の網膜下移植の安全性と忍容性を立証するために2例のプロスペクティブな臨床試験を開始した。試験に使われたヒト胚幹細胞の分化制御により得られた99%以上の純度の網膜色素上皮は、動物試験で宿主の網膜色素上皮層に統合され、移植後成熟した休眠単分子層を形成することが確認された。術後の最初の4か月の間いずれの患者においても過剰増殖、異常増殖、あるいは移植拒絶の兆候は確認されなかった。視力の評価については患者との合意になかったが、観察期間中も患者が視力を悪化させず、Early Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)視力チャートでは、Stargardt黄斑ジストロフィー患者の視力は0文字から5文字に改善され、また、年齢が関係した乾燥黄斑変性患者においても視力はEDTRSで21文字から28文字に改善される様に思われた。ヒトの胚幹細胞由来の細胞を用いた治験は、最初の安全性のハードルを乗り越えたようである。
[Lancet published online January 23, 2012]
2012/01/23 新しいキナーゼ阻害剤は結腸直腸がんの生存を改善
Results of a phase III randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial (CORRECT) of regorafenib plus best supportive care (BSC) versus placebo plus BSC in patients (PTS) with metastatic colorectal cancer (mCRC) who have progressed after standard therapies.
新たなマルチキナーゼ阻害剤regorafenibは、2012年のGastrointestinal Cancer Symposiumで発表されたデータによると、転移性の結腸直腸がん患者の生存を有意に改善し、疾患の進行を遅らせる様に思われる。Mayo ClinicのGrothey博士を中心とするCORRECT Study Teamは、標準療法に失敗した転移性結腸直腸がん(mCRC)患者760例で、第Ⅲ相、無作為、二重盲検、プラセボ対照、多施設臨床試験(CORRECT)により経口用マルチキナーゼ阻害剤regorafenibによる治療を実施した。経口用regorafenib 160mg(3週間投薬/1週間休薬)と最善の対照療法(BSC)の組み合わせによるプラセボ比較試験の中間解析の結果は、全生存(OS)の推定ハザード比(HR)0.773(p=0.0051)を示し、OSの中央値はregorafenibで6.4か月、プラセボで5.0か月と29%の生存延長が見られた。無進行生存(PFS)の推定ハザード比は、0.493(p<0.000001)であり、PFSの中央値はregorafenibで1.9か月、プラセボで1.7か月であった。全奏効率はregorafenibで1.6%、プラセボで0.4%、であった。Regorafenib群で最も高いグレード3の有害事象は手足の皮膚反応(17%)、けん怠感(15%)、下痢(8%)、抗ビリルビン血症(8%)、及び高血圧(7%)であった。
[2012 Gastrointestinal Cancers Symposium Abs LBA385 January 21, 2012]
2012/01/16 自閉症の胃腸障害と腸内細菌
Application of novel PCR-based methods fro detection, quantitation, and phylogenetic characterization of Sutterella species in intestinal biopsy samples from children with autism and gastrointestinal disturbances.
胃腸障害は自閉症の小児で一般的に報告されているが、Mailman School of Public Health, Columbia UniversityのWilliams博士らの研究から、腸内細菌における組成の変化と関連しているかもしれないことが示された。博士らは、自閉症で胃腸障害を持つ(AUT-GI)小児と胃腸障害を持たない自閉症(Control-GI)の小児の回腸と盲腸の生検試料中の腸内細菌を調査し、前者でAlcaligenaceaeの存在を確認したが、後者では確認できなかった。このAlcaligenaceaeは主としてSutterella属の細菌であり、遺伝子型決定分析でSutterella wadsworthensis又はSutterella stercoricanisのどちらかが優位に立っていることが明らかになった。Sutterella属の関与は免疫学的にも確認され、AUT-GI小児の血漿中にSutterella wadsworthensis抗原に対するIgG又はIgM抗体が存在した。Sutterella属と自閉症患者の胃腸障害の関連は明らかとなったものの、因果関係は不明であり、更なる研究が必要である。
[mBio 3(1): e00261-11, 2012]
2011/12/26 人は左に傾くと小さく推測する
Leaning to the left makes the Eiffel Tower seem smaller. posture-modulated estimation
Erasmus University RotterdamのEerland博士らは、身体の姿勢が数量に対する人々の推測に影響するかを調査した。メンタルナンバーライン理論によれば、人々は心の中で左に小さい数字を、右に大きな数字を並べて数列を表す。そこで博士らは、人々をバランスボードに立たせ、参加者に傾きが分からない様にして、右あるいは左に傾いている間、及び真っ直ぐ立っている間に、いくつかの推測の質問に答えさせた。その結果、博士らは平均的に左に傾いたときに低く推測していることを見いだした。この知見は心の中で左から右にカウントする人は、左に小さい数を描くと仮定するメンタルナンバーライン理論と符合する様に思われる。右から左にカウントする文化を持った人々の間ではどうだろうか?
[Psychological Science 22(12): 1511-1514, 2011]
2011/12/19 便潜血検査で大腸がんの早期発見
Outcomes of the bowel cancer screening programme (BCSP) in England after the first 1 million tests.
英国で2006年に始まった大腸がんスクリーニングプログラム(①60歳の誕生日が近づいた郵便で便潜血検査キットが自動的に送られてくる、②3つの別々の排便からサンプルを採取する、③サンプルを採取した日付にマークし、密封キットを返信用封筒に入れて郵便で送り返す)は、2008年10月までに60歳代の被験者およそ210万人に便潜血検査を受けるように勧告し、男性で49.6%、女性で54.4%の約108万人が検査を受けた。この内、17,518例(男性10,608例、2.5%;女性6,920例、1.5%)が検査異常であり、そのうち、98%が最初の検査として大腸内視鏡検査を受けた。がん(1,772例)と高リスク線腫(6,543例)が検査を受けた男性の11.6%と43%、女性の7.8%と29%で見つかった。がんの71%は早期(ポリープがん10%、Duke A 32%、Duke B 30%)であり、英国がん登録から予期していた左側67%、右側24%と比べて、左側(直腸29%、シグモイド45%)77%が、右側わずか14%であった。著者のLogan博士らの結論は、英国のスクリーニングにおける便潜血検査陽性は、予備的試験の結果と最初の欧州での臨床試験の結果とよく一致した。診断時のがんのステージでは、予期した改善があったけれども、左側のがんの割合が予期したより高かった。
[Gut online first December 7, 2011]
2011/12/12 がん併用療法の中の万能薬
Finding a panacea among combination cancer therapies.
オーダーメード医療のアプローチには、①がんはしばしば治療に耐性の表現型を発生する、②治療は非常に高価になり得る、③標的訳のほとんどは未だに開発されていない、といった多くの実施上の問題がある。九州大学の山口博士とUniversity of California San DiegoのPerkins博士は、別のアプローチとしてABT-263/737(ABT)のようなBcl-2アンタゴニストと2-デオキシグルコース(2DG)を併用する療法を提案している。すなわち、アポトーシス促進タンパク質Bakは、Mcl-1とBcl-xLの両方から遊離させられる時だけ、アポトーシスを誘発することが出来るので、2DGによりBak-Mcl-1複合体を解離し、ABTは、Bcl-xLと結合することが出来るので、Bak-Bcl-xL複合体を解離し、Bakを開放し、アポトーシスを誘発する。ABTは、アポトーシスの終点に非常に近い段階でアポトーシスを直接引き起こすので、2DG-ABTの併用療法は、少ない副作用で進展中の全段階で多くのタイプのがんに適用することが出来る、というものである。
[Cancer Research published online first November 3, 2011]
2011/12/05 薬物有害事象による高齢者の緊急入院の薬剤トップ4
Emergency Hospitalizations for adverse drug events in older Americans
高齢者の薬物有害事象による入院は回避できる原因である。CDCのDivision of Healthcare Quality PromotionのBudnit博士らは、薬物有害事象のために入院したサンプル症例5077例を基に、National Electronic Injury Surveillance System-Cooperative Adverse Drug Event Surveillanceプロジェクト(2007~2009年)の薬剤有害事象のデータより、2007から2009年で薬物有害事象のため毎年99,628例の65歳以上の米国成人が緊急入院したと推定した。これらの入院患者のおよそ半分(48.1%)が80歳以上であった。入院患者のほぼ2/3(65.7%)は、意図的でない薬物過剰摂取のためであった。原因となった薬剤のトップ4は、ワーファリン(33.3%)、インスリン(13.9%)、経口抗血小板薬(13.3%)、経口血糖降下薬(10.7%)であった。高リスクの薬剤は、入院のわずか1.2%と関係していたに過ぎなかった。これらトップ4の薬剤の管理を改善すれば、高齢者における薬剤有害事象による入院はもっと減らせると思われる。
[NEJM 365(21): 2002-2012, 2011]
2011/11/28 新生児の胆道閉鎖症はビリルビン濃度で分かる
Patients with biliary atresia have elevated direct/conjugated bilirubin levels shortly after birth.
新生児の胆道閉鎖症(BA)の発症は生後数週間以内であると思われている。その早期診断は転帰を改善するために必要である。Baylor College of Medicine and Texas Children's HospitalのHarpavat博士らは、ビリルビンの濃度に着目し、出産直後の新生児はまだこの疾患になっていない正常な直接/共役ビリルビン(DB/CB)濃度を持っていると仮定して、2007年1月から2010年12月31日の間に生まれたBAを発症した新生児61例について調査した。対照は後に新生児肝疾患に全くならなかった正期産新生児であった。61例中34例が生後24~48時間にビリルビン濃度が測定されていたが、平均総ビリルビン(TB)濃度が光線療法の限界以下のままであっても、BA患者34例全員のDB濃度は臨床検査値の標準を上回り(BA患者:1.4±0.43 mg/dL、対照:0.19±0.075 mg/dL、P <0.0001)、時間と共に増加していた。DB/CB濃度の増加にもかかわらず、患者の大半(79%)は正常なDB:TB比≦0.2であった。Harpavat博士らは、この研究の結果を基にBAの早期診断のためには以下の2つの可能性、①黄疸が現れる新生児よりもむしろDB/CB濃度上昇を全新生児で検査する、②DB:TB比が0.2以上を示す新生児よりも、DB/CB濃度が上昇した全新生児を追跡調査する、を提案すると結論している。
[Pediatrics published online November 21, 2011]
2011/11/21 新しいC型肝炎ウイルス薬はインターフェロンなしで100%の治癒率を達成
Interferon is not required for sustained virologic response in treatment-naive patients with HCV GT2 or GT3.
C型肝炎ウイルスに強力で特異的なヌクレオチドアナログの新薬PSI-7977は1日1回投与で広範囲なC型肝炎ウイルスの遺伝子型に優れた高ウイルス活性を示す。このPSI-7977 400mgとリバビリンの2週間投与(ELECTRON試験)は、C型肝炎ウイルスGT2又はGT3の患者におけるC型肝炎ウイルスRNAの迅速な抑制(2週間で80%が陰性)を生じさせ、100%の急速ウイルスRNA陰性化(RVR)を達成した。Auckland City HospitalのGane博士らは、発表で以下の様に結論した。①PSI-7977/リバビリンの12週間投与は、C型肝炎ウイルスGT2/3において、100%のSVRを達成し、全C型肝炎ウイルス遺伝子型でのPhaseⅢプログラムを前に進められる。②IFNの効能、耐性への高い障壁、及び安全性/忍容性は、インターフェロンフリーの治癒を許した。③PSI-7977は、全ての遺伝子および集団におけるC型肝炎ウイルスの治療パラダイムを劇的に変える潜在力を持つ。
[Liver Meeting 2011: AASLD 62nd Annual Meeting Abstract 34 November 6, 2011]
2011/11/14 血餅と沈着物を見分けるツール
Intra-arterial catheter for simultaneous microstructural and molecular imaging in vivo
Harvard Medical School and Massachusetts General HospitalのTearney博士らが開発した高周波数領域画像(OFDI:optical frequency comain imaging)技術と近赤外線蛍光(NIRF:near-infrared fluorescence)画像技術を組み合わせた動脈カテーテルは、血餅を形成する原因となるタンパク質フィブリン(線維素)と最も危険なプラークで見いだされる酵素、カテプシンBを検出することが出来るので、動脈内の沈着物が動脈を塞ぐ可能性のある危険な血餅か脂肪垢のような可溶性の沈着物なのかを識別することが出来る。この新しいカテーテルはアテローム硬化症とステント治療の研究や高リスクの生物学的構造的冠動脈プラークを同定する新しいツールになるだろう。
[Nature Medicine published online November 6, 2011]
2011/11/07 長期投与のアスピリンは結腸がんを予防
Long-term effect of aspirin on cancer risk in carriers of hereditary colorectal cancer: an analysis from the CAPP2 randomised controlled trial
Institute of Genetic Medicine, Newcastle UniversityのBurn博士らは遺伝性結腸直腸がんの主たる形であるLynch症候群のキャリアにおけるアスピリンと難消化性デンプンの抗腫瘍効果を調べた。博士らは、無作為治験において最大4年間の600mgのアスピリン又はアスピリンのプラセボ、又は30gの難消化性デンプン又はスターチのプラセボ投与の2×2の要因計画にLynch症候群のキャリア861例を無作為に割り付け、結腸直腸がんの発生との関係を調査した。平均追跡調査期間は55.7か月で、861例中48例の参加者(アスピリン18/427例、プラセボ30/434例)が原発性結腸直腸がんを発生した。2年間の介入を全うした参加者(アスピリン258例、プラセボ250例)ではパー・プロトコル解析でアスピリン群のハザード比が0.41(95%CI=0.19-0.86、p=0.02)と罹患率が0.37(95%CI=0.18-0.78、P=0.008)であった。介入中の有害事象はアスピリンとプラセボでは差はなかった。著者らは、結論として、平均25か月間、1日600mgのアスピリンは、遺伝性結腸直腸がんのキャリアで、55.7か月後のがんの発生を実質的に低下させたとしているが、アスピリン治療の最適用量と投与期間を確立するには更なる研究が必要であると述べている。
[Lancet early online publication October 28, 2011]
2011/10/31 進行性非小細胞肺がんにおける治療ワクチンの効果
Therapeutic vaccination with TG4010 and first-line chemotherapy in advanced non-small-cell lung cancer: a controlled phase 2B trial.
化学療法は非小細胞肺がん(NSCLC)の進行期のための標準的ケアである。Universite de StrasbourgのQuoix博士らは、この標準的化学療法にMUC1腫瘍関連抗原とインターロイキン2をコードするポックス・ウイルスを基にしたがんワクチン(TG4010)を併用の効果を化学療法単独と比較した。ステージⅢB又はⅣの進行性NSCLC患者148例を併用療法群(74例)と化学療法単独群(74例)に割り付け、前者はTG4010(108pfu)+シスプラチン(75mg/m2、第1日目)とジェムシタビン(1,250mg/m2、第1日目と第8日目)を3週に1回の繰り返し、6サイクルの投与を受けた。後者は対照群として同じ化学療法だけを受けた。
6か月の無進行生存率(PFS)は、併用群で43.2%、対照群で35.1%であった。National Cancer Institute Common Toxicity Criteriaに従ったグレードでの発熱(23.3%対8.3%)腹部痛(16.4%対2.8%)、及び注射部位痛(5.5%対0%)は、対照群よりも、併用群で起こることが多く、最も一般的な3~4グレードの有害事象は、好中球減少(45.2%対43.1%)とけん怠感(24.7%対18.1%)であった。まだ臨床第2相試験の結果であり、更なる試験の結果を待たなくては確かな骨はいえないが、ポックス・ウイルスを基にしたがんワクチンは進行性NSCLCにおける化学療法の効果を高める可能性が示唆された。
[Lancet Oncology published online October 22, 2011]
2011/10/24 Fusobacteriumと結腸直腸がんとの間のリンク
①Genomic analysis identifies association of Fusobacterium with colorectal carcinoma.、②Fusobacterium nucleatum infection is prevalent in human colorectal carcinoma.
Dana-Farber Cancer InstituteのMeyerson博士らは、9例の結腸直腸がんと正常細胞のペア由来の全ゲノム配列を用いて、結腸直腸における微生物叢の構成を明らかにし、Fusobacteriumの配列が結腸直腸がんの微生物叢中に豊富にあることを、定量的PCRとがん/正常DNAペアの16S rDNA配列により確認した。一方、BC Cancer AgencyのHolt博士らは、結腸直腸がんとそれにマッチした正常組織標本をスクリーニングし、結腸直腸がんの標本中にFusobacterium nucleatumの配列の顕著な過剰表現を見いだした。この嫌気性細菌は、侵襲性で炎症性であり、これまでも多くの疾患、例えば炎症性腸疾患、歯周炎、心膜炎、及び血栓性静脈炎などと関連していることが分かっている。胃がんとHelicobacter pyloriのリンクの例もあり、Fusobacterium nucleatumと結腸直腸がんのリンクがあるのだろうか。Fusobacterium nucleatumは、がんの増殖にとって必須であるのか、あるいは、がんは単に細菌に快適な環境を提供しているだけかもしれない。いずれにしても、結腸直腸がんの発症機序におけるFusobacterium属の正確な役割は更なる研究を必要とする、とMeyerson博士は結んでいる。
[Genome Research published in advance October 18, 2011]
2011/10/18 口腔微生物叢の変化は膵臓がんを含む膵臓疾患と関連
Variations of oral microbiota are associated with pancreatic diseases including pancreatic cancer.
口腔疾患と膵臓がんのリスク増との間の関連性は、いくつものプロスペクティブコホート研究で報告されている。David Geffen School of Medicine at UCLAのFarrell博士らは、唾液中の微生物叢の変化を測定し、膵臓がんと慢性膵臓炎との潜在的な関連性を評価した。博士らは、①10例の切除可能な膵臓がん患者とその患者にマッチした健常対照10例の唾液中の微生物叢の変化を調べるためHuman Oral Microbe Identification Microarrayを用いた微生物のプロファイリングの段階、②リアルタイム定量PCR(qPCR)による細菌候補の同定と検証の段階、③28例の切除可能な膵臓がん患者の独立コホートでのqPCRによる細菌候補の妥当性確認の段階、の3段階に分けて研究を進めた。その結果、膵臓がん患者と健常な対照者との間の唾液の総合的比較は、唾液の有意な変化を明らかにした。健常対照(10例)の細菌種/クラスターと比べて、すい臓がん患者(10例)の唾液では31の細菌種/クラスターが増加した一方で、25の細菌種/クラスターが減少した。6種の細菌候補のうち2種(Neisseria elongataとStreptococcus mitis)が、別々のサンプルを用いて認証され、膵臓がん患者と健常対照との間で有意な変化を示した(56例、qPCR、p<0.05)。更に、2種の細菌(Granulicatella adiacensとS. mitis)は、慢性膵臓炎サンプルと健常対照との間で有意な変化を示した(55例、qPCR、p<0.05)。2種の細菌(N. elongataとS. mitis)の組み合わせは、健常対照者から膵臓がん患者を識別するのに、94.6%の感度と82.1%の特異度を示した。
[Gut published online first October 12, 2011]
2011/10/11 アルツハイマー病の神経変性メカニズムのためのin vivoモデル
In vivo olfactory model of APP-induced neurodegeneration reveals a reversible cell-autonomous function.
アミロイド前駆タンパク質(APP)は、アルツハイマー病(AD)の神経変性と関係付けられているが、それに関係した細胞死はin vivoでつかまえるのが難しく、神経細胞脱落に影響を及ぼすAPPの役割は依然として不明である。嗅覚障害は、AD患者におけるアミロイド病理によるADの初期症状である。U.S. National Institute of Neurological Disorders and StrokeのBelluscio博士らは、APPが誘発した神経変性を調べるため、嗅覚の感覚ニューロンに家族性AD変異を含んだヒト化APP(hAPP)を過剰発現させたトランスジェニックマウスを開発したところ、このマウスは細胞外プラークが無いにもかかわらず、著しい数のアポトーシスニューロンが3週齢で検出されることを見いだした。この広範囲の神経変性は、未熟なニューロンにおけるhAPP発現レベルを低下させることにより救うことが出来ることも観察した。また、hAPPが誘発した神経変性が可逆的であることも示し、ADが関係した神経喪失が救われる可能性があることを示唆した。このユニークなin vivoモデルが、ADが関係した神経変性の基にあるメカニズムを見つけるのに役立つのみならず、可能性のある治療法をテストするためのプラットフォームとして使うことが出来ると博士らは考えている。
[J Neurosci 31(39): 13699-13704, 2011]
2011/10/03 がんの化学療法への耐性を誘発する脂肪酸が見つかる
Mesenchymal stem cell induce resistance to chemotherapy through the release of platinum-induced fatty acids.
化学療法への耐性発現は、がんの効果的な治療を続けるための大きな障害である。University Medical Center Utrechtの研究者たちは、マウスモデル実験で内因性の間葉幹細胞がプラチナ系の化学療法剤による治療中に活性化され、広範な化学療法に対し腫瘍細胞を保護する因子を分泌することを見つけた。この因子は多価不飽和脂肪酸であり、12-オキソ-5,8,10-ヘプタデカトリエン酸(KHT)とヘキサデカ-4,7,10,13-テトラデカテトラエン酸(16:4(n=3))と同定された。これらの脂肪酸は少量で多くの化学療法剤に対する耐性を誘発する。多価不飽和脂肪酸の産生に関係している中心的な酵素(シクロオキシゲナーゼとトロンボキサン合成酵素)を遮断することでこの誘発を避け、耐性化を回避することが出来る。これらの知見は、間葉幹細胞が化学療法に対する耐性の強力なメディエーターであり、患者の化学療法の有効性を強化する標的であると考えられる。
[Cancer Cell 20(3): 370-383, 2011]
2011/09/26 インスリン経鼻投与によるアルツハイマー病の進行抑制
Intranasal insulin therapy for Alzheimer disease and amnestic mild cognitive impairment.
中枢神経系におけるインスリンの濃度とインスリンの活性がアルツハイマー病では低下している。University of WashingtonのCraft博士らは、脳内のインスリンを正常な濃度に回復させることはアルツハイマー病患者に治療的メリットがあると考え、経鼻投与によるインスリンの効果を調査した。経鼻インスリンは、血中のインスリン濃度あるいはグルコース濃度に有害な影響を与えることなく、中枢神経系にインスリンを迅速に運ぶことができる。博士らは、健忘性軽度認知障害(64例)、軽度~中等度アルツハイマー病(40例)の成人104例に、プラセボ(30例)、インスリン20IU(36例)、インスリン40IU(38例)を4か月間毎日投与した。評価の第一尺度は遅発性の認知機能スコアとDementia Severity Rating Scaleスコアで、第二尺度はAlzheimer Disease's Assessment Scale-cognitive subscale(ADAS-cog)及びAlzheimer Disease Cooperative Study-activities oof daily living(ADCS-ADL)スケールで実施した。参加者の一部は治療の前後に腰椎穿刺(23例)とフルデオキシグルコースF18によるPET(40例)を実施された。20IUのインスリンによる治療は、遅発性記憶(P<0.05)の進行を止め、20IUと40IUの両インスリンは機能的能力(p<0.01)を維持した。今回の試験は予備的試験であったが、将来、健忘性軽度認知障害患者とアルツハイマー病患者のための経鼻インスリン療法の長期的治験を実施するに十分な支持を与えた。
[Arch Neurol Online first September 12, 2011]
2011/09/21 コンドロイチン硫酸は手変形性関節症の痛みと機能も改善
Symptomatic effect of chondroitin sulfate 4&6 in hand osteoarthritis the finger osteoarthritis chondroitin treatment study
コンドロイチン硫酸は、最近、ひざの変形性関節症の治療に使われており、相対的に良性の安全なプロフィールを持っている。University Hospitals of GenevaのGabay博士らは、コンドロイチン硫酸が手の変形性関節症にも効果があるかどうかを確認するために、X線による手の変形性関節症の症候を示す患者162例を対象に無作為プラセボ対照二重盲検臨床試験Finger osteoarthritis Chondroitin Treatment Study(FACTS)を実施した。6か月の試験終了時、1日1回のコンドロイチン硫酸800mgを服用した患者(80例)は、プラセボ(82例)と比べて全般的な手の痛みの有意に大きな減少と視覚的アナログ尺度(VAS)の割合(-8.7mm)での大きな低下(p=0.02)があることが確認され、コンドロイチン硫酸が良い安全性プロフィールを持ち、症候性の手変形性関節症の痛みと機能を改善することが証明された。
[Arthritis & Rheumatism published online September 8, 2011]
2011/09/05 高齢者では徐波睡眠の減少は高血圧のリスクを高める
Decreased slow wave sleep increases risk of developing hypertension in elderly men..
最近の研究で、健康と心臓血管系疾患に対する睡眠の重要性はますます明らかになってきている。San Diego Veterans Affairs Healthcare SystemのRedline博士らは、睡眠時呼吸障害、睡眠時間、及び睡眠の仕組み等が高血圧の発生に及ぼす影響について、65歳以上(平均年齢75.1±4.9歳)の歩行可能な男性地域住民で家庭での睡眠ポリグラフ計による睡眠研究(2003~2005年)時に高血圧でなく、追跡調査(2007~2009年)を受けた784例で評価した。784例の高齢男性のうち平均追跡調査3.4年後に243例が高血圧と診断された。高血圧の発生は、低酸素血の増加、睡眠段階N1及びN2の増加、及び睡眠段階N3(徐波睡眠)の減少と関連していた。徐波睡眠の睡眠時間の最大四分位に対する最少四分位のオッズ比は1.83であり、徐波睡眠の時間が短くなると高血圧になるリスクは80%も高いことを意味した。Redline博士は、女性はこの試験に含まれていないけれど、多くの理由から、徐波睡眠のレベルが低い女性も高血圧になるリスクを持つことは男性と全く同様である、と述べている。
[Hypertension published online before print August 29, 2011]
2011/08/29 弾性ストッキングで閉塞性睡眠時無呼吸の発生を抑制
Attenuation of obstructive sleep apnea by compression stockings in subjects with venous insufficiency.
H?pitaux de Paris, Groupe Hospitalier Piti?-Salp?tri?reのRedolfi博士らは、静脈不全のおける閉塞性睡眠時無呼吸患者は、弾性ストッキングを1日中着用することにより、肢の体液貯留を少なくし、夜間の頸部への体液の移動量を減らすことにより閉塞性睡眠時無呼吸の発生回数を減らすことが出来ることを見出した。博士らは12例の静脈不全で閉塞性睡眠時無呼吸の肥満でない被験者について、1週間弾性ストッキングを着用又は弾性ストッキングを着用しない(対照)のクロスオーバー試験を行った。その結果、弾性ストッキング期間の終了時の夜間の肢の体液量は62%減少(p=0.001)、それに伴い頸部周辺の体液量の増加も60%減少(p=0.001)した。また、睡眠1時間当たりの無呼吸と呼吸低下の回数は36%減少した(48.4±26.9⇒31.3±20.2、p=0.002)。夜間での肢から頸部への体液の再配分は、静脈不全の被験者における閉塞性睡眠時無呼吸の発症に関連し、夜間の頸への体液移動の量を減らすことにより閉塞性睡眠時無呼吸が改善される。
[Am J Respir Crit Care Med published online August 11, 2011]
2011/08/22 高齢の肺がん患者にもダブレット化学療法を
Carboplatin and weekly paclitaxel doublet chemotherapy compared with monotherapy in elderly patients with advanced non-small-cell lung cancer: IFCT-0501 randomized, phase 3 trial
フランスの研究者たちは高齢の肺がん患者は若い患者に良く用いられる攻撃的な二重の作用の化学療法(ダブレット化学療法)により大きな利益を得ることができる、とLancet誌に報告した。プラチナを基にしたダブレット化学療法は、適合した非高齢者成人における進行性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に推奨されるが、70歳以上の高齢者には単剤療法が推奨される。Hopitaux Universitaires de StrasburgのQuoix博士らは進行性NSCLCの高齢患者における単剤療法とカルボプラチンとパクリタキセルのダブレット化学療法レジメとを比較した。局所的に進行性あるいは転移性のNSCLCでWHO一般状態スコア0~2の70~89歳の患者をカルボプラチン (1日目) に加えてパクリタキセル(1日目、8日目、15日目)の治療3週、休薬1週(225例)又はvinorelbineあるいはゲムシタビンの単剤療法の治療2週、休薬1週(226例)のどちらかに無作為に割り付けた。全生存期間中央値はダブレット化学療法で10.3か月、単剤療法で6.2か月(ハザード比0.64、p<0.0001);1年生存率はそれぞれ45.5%と25.4%であった。毒性作用は、単剤療法よりもダブレット化学療法で頻度が高かく、最高頻度は好中球減少でダブレット化学療法108(48.4%)対単剤療法28(12.4%)、次いで脱力感23(10.3%)対13(5.8%)であった。プラチナを基にしたダブレット化学療法は、単剤療法と比べて毒性作用は増加するが、NSCLCの高齢患者での延命効果は大きかった。Quoix博士らは高齢NSCLC患者の治療パラダイムが再考されるべきだと感じている。
[Lancet published online Aug 9, 2011]
2011/08/16 金ナノ粒子を使った小線源療法
Gold nanoparticles could help strangle tumors
Brigham and Women's Hospital及びDana Farber Cancer InstituteのBerbeco博士らは、金ナノ粒子から発する放射線が誘発した光/オージェ電子により内皮細胞核への線量の増強を微量線量測定法により推測し、小線源療法の効果を増強することをAAPM/COMPの合同ミーティング2011で発表した。小線源療法のソースとしては50kVp、I-125、Pd-103、及びYb-169について調査し、金ナノ粒子がある場合とない場合の核に対する線量の割合を表す核線量増強値(nDEF)により内皮細胞の感受性核への実質的な線量の増強が、小線量療法とアジュバントとしての腫瘍の血管を標的とする低エネルギー源の金ナノ粒子を適用することにより達成出来ることを予測した。この方法は、金ナノ粒子を含まない健康な組織に対する毒性を増やすことなく、腫瘍の内皮細胞に対し重大な生物学的ダメージを生ぜしめる。
[Ann Intern Med 155(3): 137-144, 2011]
2011/08/08 尿タンパク試験紙検査は無症状の腎疾患を検出
Dipstick proteinuria as a screening strategy to identify rapid renal decline.
急速な腎機能低下(RKFD)は、心血管疾患の有病率と死亡率を予測するが、それを測定する推算糸球体濾過率(eGFR)経時的評価は一般大衆をスクリーニングするには費用効率が悪い。University of Western OntarioのClark博士らは、eGFR経時的評価に変わる検査法としてアルブミン尿と尿タンパク試験紙検査を7年間の追跡調査を持つ地域住民ベースのプロスペクティブコホート研究における2,574例の被験者で検討した。その結果、尿タンパク(≧1g/L)試験紙による検査は、アルブミン尿よりもRKFDを強力に予測することを見出した。尿タンパク(≧1g/L)試験紙によるスクリーニングは90.8%の患者で進行状態を正しく同定した。間違ってRKFDと分類したのは1.5%、RKFDでないと同定したが結果的にRKFDとなったのは7.7%であった。心血管疾患、60歳以上、糖尿病および高血圧といったリスクファクターを持つ被験者の中で、eGFR経時的評価によりRKFDを同定する確率は、尿タンパク(≧1g/L)試験紙を取り入れたあとは13%から44%に上がった。RKFDをスクリーニングする方法としての尿タンパク(≧1g/L)試験紙を1次スクリーニング使用することで、経時的eGFR評価をする患者数を減らすことができると考えられる。
[J Am Soc Nephrol published online July 29, 2011]
2011/08/01 睡眠の連続性の中断は記憶固定を損なう
Optogenetic disruption of sleep continuity impairs memory consolidation.
記憶固定は睡眠機能の一つであるが、睡眠の期間、強度、及び連続性を含むいくつかの機能により特徴付けられる複雑な現象である。また睡眠の連続性は様々な神経学的、精神医学的状況で混乱させられる。睡眠研究で使われる現在の技術では、睡眠機能だけを単独で操作することは出来ない。ヒポクレチン/オレキシン・ニューロンは、睡眠と覚醒状態の間の脳の回路を切り替えるために重要なニューロンである。Stanford UniversityのRolls博士らは、optogenic光遺伝学の技術を用いて、睡眠の総量及び強度に影響を及ぼすことなく、ヒポクレチン/オレキシン・ニューロンを活性化させて睡眠を細分化することに成功した。この技術を用いてマウスに新規物体認識課題の学習をさせた後で、睡眠を障害すると、マウスの記憶能力は有意に低下した。著者らは、人が記憶障害を避けるにはどの位の睡眠の連続性が必要かは見極められなかったが、マウスでは睡眠の平均期間が正常の62~73%に維持されているなら、記憶が影響を受けることはないことを示した。
[Proc NAS early issue July 25, 2011]
2011/07/25 多分化能生着の能力を持つ単一ヒト造血幹細胞
Isolation of single human hematopoietic stem cells capable of long-term multilineage engraftment.
University of TorontoのDick博士らは、造血幹細胞が豊富なサブセットの中のいくつかの接着分子の発現の追跡により、特異的な造血幹細胞のマーカーとしてCD49fを明らかにした。単一のCD49f+細胞は長期の多分化能移植を高効率に発生させ、CD49f発現が喪失すると、一時的に生着する多能性前駆細胞(MPP)を発生させた。ヒトの造血幹細胞と多能性前駆細胞の区別は、造血幹細胞の分子決定因子の研究を可能にするであろう。Dick博士は、CD49fでマークした細胞のほんの小集団を用いて、一から患者の完全な血液系を安全に発生させることが可能であり、この方法が確立すれば、白血病の人々の治療に新しい療法を提供することが出来ると考えている。
[Science 333(6039): 218-221, 2011]
2011/07/18 UVB照射が誘発した痛みを仲介する疼痛分子
CXCL5 mediates UVB irradiation-induced pain
Wolfson Centre for Age Related Diseases, King's College LondonのDawes博士らは、様々なタイプの疼痛の鍵となるメディエータを見つけるために、ラットと10例の健常人の皮膚の一部を日焼けさせるために紫外線B(UVB)照射を行い、皮膚の生検をとり、炎症反応に関係した分子をスクリーニングした。痛み過敏性に寄与することが以前に示されていた幾つかの遺伝子(IL-1β、IL-6及びCOX-2)の発現がUVB暴露後に有意に増加し、いくつかのケモカイン(CCL2、CCL3、CCL4、CCL7、CCL11、CXCL1、CXCL4、CXCL7、及びCXCL8)の異常調節が見られた。測定された遺伝子の中で、CXCL5はヒトの皮膚にUVB処理により最大規模の炎症を誘発した。また、ラットの皮膚に注射したとき、CXCL5は、UVB照射により生じた機械的な過敏性を繰り返した。この過敏性は、この分子の抗体によりCXCL5の作用は中和された。博士らの研究は、ケモカインCXCL5がヒトでもラットと同様に、UVBが誘発した炎症疼痛の末梢メディエータであることを証明した。
[Sci Transl Med 3(90): 90ra60, 2011]
2011/07/11 ドイツで流行の大腸菌O104
Characterisation of the Escherichia coli strain associated with an outbreak of haemolytic uraemic syndrome in Germany, 2011: a microbiological study
ドイツで2011年5月初め以来、大腸菌O104:H4株が原因の溶血性尿毒性症候群と出血性下痢840例、死亡39例が発生している。University of MunsterのBielaszewska博士らは、2011年5月23日~6月2日にドイツ、MunsterにあるNational Consulting Laboratory of Haemolytic Uraemic Syndromeに提出された患者80例由来の便サンプルを分析し、毒性プロファイルと表現型について調べた。全分離株は、HUSEC041クローン(sequence type 678)であり、遺伝子座の全てが、典型的な志賀毒素産生大腸菌(stx2、iha、lpf026、lpf0113)と腸管凝集性大腸菌(aggA、aggR、sef1、pic、aap)の遺伝子座が組み合わさった毒性プロファイルを共有し、志賀毒素産生大腸菌と腸管凝集性大腸菌を特徴付ける表現型を発現しており、志賀毒素2の産生と上皮細胞への集合性接着を包含していた。また、分離株、HUSEC041において広域スペクトルのβ-ラクタマーゼ表現型の欠如を表示していた。この株は、腸管上皮へ接着能が増大し、志賀毒素の体内吸収を手助けし、溶血性尿毒性症候群へ進行し易いと考えられる。
[Lancet Infectious Disease, Early online publication June 23, 2011]
2011/07/04 毒蛇にかまれた傷のための応急処置‐時間を稼ぐ
A pharmacological approach to first aid treatment fro snakebite.
ニトログリセリンパッチは心臓病患者を救う。今は酸化窒素供与体を含んだ軟膏が、毒蛇にかまれた犠牲者の生存の可能性を高めるとUniversity of Newcastleのvan Helden博士らがNature Medicine誌に報告した。蛇の毒素は分子量が大きいため血管内に直接押し入ることが出来ず、リンパ系に取り込まれ、そこを経由して血管内に入る。本来備わっているリンパ管ポンプの邪魔をする酸化窒素供与体を含んだ軟膏は、ラット及びヒトでリンパの通過時間を50%以上も遅らせた。この薬理学的方法は、蛇にかまれた犠牲者に治療と抗毒素治療を受けるための時間をより多くするだろうと結論している。
[Nature Medicine, published online June 26, 2011]
2011/06/27 ジアセレインは2型糖尿病の血糖管理を改善する
Effect of diacerein on insulin secretion and metabolic control in drug-na?ve patients with type 2 diabetes. A randomized clinical trial
West National Medical Center, Mexican Institute of Social SecurityのGonzarez-Ortis博士らは、薬剤未投与の2型糖尿病患者におけるインスリン分泌と代謝管理に関する抗炎症剤ジアセレインの効果を評価し、ジアセレイン投与後インスリン分泌が上昇し、代謝管理が改善したことを報告した。博士らは、無作為、二重盲検、プラセボ対照臨床試験を2型糖尿病の薬剤未投与の成人患者40例で実施し、無作為化後、20例の患者に最初はジアセレイン50mg、1日1回、15日間、次いで1日2回、45日間追加投与し、残りの患者にはプラセボを投与した。介入前と2か月後にインターロイキン(IL)-1β、TNF-α、IL-6及び空腹時インスリン値を含めた代謝プロフィールを測定した。ジアセレイン投与後、インスリンの感受性には変化なく、全体のインスリン分泌(介入前:178 pmol/L、2か月後:216 pmol/L、p<0.01)が有意に上昇したが、プラセボグループでは変化はなかった。また、ジアセレイン投与後、空腹時のインスリン値(介入前:7.9 mmol/L、2か月後:6.8 mmol/L、p<0.01)とA1c濃度(介入前:8.3%、2か月後:7.0%、p<0.001)において有意な減少が見られたが、プラセボグループではわずかに上昇した(介入前:7.9%→2か月後:8.1%)。一般的な副作用のほとんどは、胃腸症状(プラセボ9例、ジアセレイン13例)と頭痛(プラセボ6例、ジアセレイン5例)であった。ジアセレイン投与が2型糖尿病の治療に潜在的な有用性を持っているが、更なる長期投与などの研究が必要であるとGonzarez-Ortis博士らは結論した。
[Diabetes Care published online May 24, 2011]